「1964 東京ブラックホール」貴志謙介著
1964年の雑誌、新聞、ニュース映像は、戦中派にはなじみ深いキャッチフレーズを蘇らせる。東京オリンピックに向けた突貫工事の様子が、聖戦を完遂するまでは「欲しがりません勝つまでは」だった状況を思い出させるのだ。メディアの記者クラブは戦時中の大政翼賛会のようになっていて、アマチュアリズム違反については報道できない。そしてオリンピック後は、オリンピックをあてこんだ過剰生産不況に見舞われる。
2021年のオリンピックを控えた現在、東京五輪の工事現場では外国人労働者が、1964年の出稼ぎ労働者と同じような劣悪な労働条件を強いられている。
1964年から現在を検証するNHKスペシャルの書籍化。
(NHK出版 1700円+税)