(23)何もできなくなった母…どうすれば自宅に戻せるのか
母の介護認定をめぐって、私は地域包括支援センターと何度も連絡を取り合っていた。入院中の母は、薬の調整が進んで精神状態が安定しつつあり、病院側からはそろそろ退院を考えてほしいと伝えられていた。しかし、認定の結果が出るまでは、次の一手を打つことができなかった。
母が家に戻れば、父と2人の生活が始まる。しかし、がんサバイバーである父も、次第に体力が落ち、認知の状態が低下してきているのではないかと私は感じていた。仮に自宅での生活を選び、いくつかの支援を受けられたとしても、それだけで母の生活を支えきれるとは思えなかった。
そうなると、私が東京から戻って介護をするしかないのだろうか。その考えが頭をよぎるたびに、私は感情を捨てた。
やがて、母の要介護認定の面接が終わったと連絡が入った。結果が出るのは1カ月ほど先になるという。12月半ばには通知が届くだろうと聞き、私はその頃に帰省して必要な準備が進められるよう段取りを始めた。
母の要介護度がわかった時点で、どう動くか。自宅に戻ってきてほしいという父の思いと、自分のことが何もできなくなった母の生活。この2つを両立させるには、住み慣れた家での暮らしを続けながら、必要な介護や医療ケアを受けられる「看護小規模多機能型居宅介護」(看多機)の利用が適しているのではないかと包括の担当者から提案があった。要介護1以上であれば利用できる点も現実的だ。