「地図とデータで見る 水の世界ハンドブック」ダヴィド・ブランション著 吉田春美訳
地球が太陽系で唯一無二の存在なのは、豊富な水があってこそ。地球上の水の97・5%は塩水で、残り2・5%の大部分が南極とグリーンランドの氷床に閉じ込められている。容易に手に入る淡水(河川水、地下水)は、全体のわずか0・7%にすぎず、毎年、再生される水はさらに少ない0・02%だという。とはいえ、その量は人間の需要をまかない、生態系を保全するのに十分な量だそうだ。
しかし、現実には世界で6億人以上の人が飲料水にアクセスできず、農業生産の40%が灌漑農業に依存している。ゆえに水の問題は、使用可能な水量の問題というよりは、水が地理的・社会的に偏在している点にある。
本書は、一番大切な資源である水について、多くの地図とデータで世界の状況を解説したビジュアルテキスト。
地域ごとの再生可能な水資源を評価する簡単な指標は、総水量を人口で割って求められ、この数値が行政単位や流域の基礎になっている。例えばフランスの水資源は1人あたり年間3300立方メートルと見積もられているが、ローヌ川流域では5400立方メートルに達し、ライン川流域では1400立方メートルに過ぎないという。
世界を見ると、8万立方メートルのカナダや4万立方メートルのブラジルなど豊富な国がある一方で、7立方メートルのクウェートなど、ほとんど水資源がない国もある。
そうした世界の水事情をはじめ、古代から続く水を制御するための技術革新の歴史、水質悪化やダム建設など水資源をめぐる脅威、そして2050年に90億人に達するといわれる人類の水に関する予測や取り組むべき課題まで。さまざまな問題を可視化して解説。
水資源に恵まれているといわれる日本人にも決して他人事ではない。
(原書房 3080円)