「春画にハマりまして。」春画ール著

公開日: 更新日:

 浮世絵春画は、エロを超え、今や世界に認知される芸術品。喜多川歌麿らのビッグネームによる錦絵などにはウン千万円という値がつけられる。一方で、はがきサイズの「豆判春画」は、5000円程度で手に入るという。

 本書は、春画の魅力に魅せられたOLが、手が届く範囲で入手したコレクションを紹介しながら、その無限大の楽しみ方を熱く語るアートエッセー。

 春画の購入には、主にオークションサイトやフリマアプリを利用。有名な「月岡派」の肉筆画を数千円で入手したこともあり、和本や浮世絵の収集はお金持ちだけの趣味ではないという。

 美術館でガラス越しに鑑賞するのとは異なり、実際に手にしてみると、登場人物が身につけた着物の文様などを凸凹で浮かび上がらせた「空摺り」や、着物や体の膨らみに沿って盛り上げた「きめ出し」などの技巧によって、絵に立体感がもたらされているなど、マイコレクションならではの醍醐味が味わえる。

 中には、男女の結合部に膠(動物の皮や骨を煮詰めて作った糊)を塗って、愛液のテカリを妖艶に表現した絵(例の月岡派の肉筆画)や、取っ手を動かすと、男の腰がカクカクと動いて、正常位でセックスが始まる「おもちゃ絵」などもある。

 そんな春画の買い方から、見どころ、楽しみどころ、失敗談まで女性ならではの視点で紹介。

 さらに著者のコレクションは、春画に出てくる「張形」や、当時のセックスハウツー本である「性典物」にまで範囲が広がる。そこに記された「テクニック」に注目したり、紹介された性具を作ってみたり。果ては、処方箋に従って怪しい薬を作ってみるなど、さまざまな視点から春画と性典物のすべてを味わい尽くす。

 読後は春画が気になって仕方がなくなるはず。

(CCCメディアハウス 1650円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    大谷翔平を激怒させたフジテレビと日本テレビ…もっと問題なのは、情けない関係修復の仕方だ

    大谷翔平を激怒させたフジテレビと日本テレビ…もっと問題なのは、情けない関係修復の仕方だ

  2. 2
    悠仁さま「東大合格」の逆風になりかねない宮内庁“3年前の痛恨ミス”…トンボ論文の信頼性に影響も

    悠仁さま「東大合格」の逆風になりかねない宮内庁“3年前の痛恨ミス”…トンボ論文の信頼性に影響も

  3. 3
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  4. 4
    「今市事件」服役中の勝又拓哉受刑者「『有希ちゃんを殺してごめんなさい』って50回言わされた」

    「今市事件」服役中の勝又拓哉受刑者「『有希ちゃんを殺してごめんなさい』って50回言わされた」

  5. 5
    ロッテ佐々木朗希 日本では「虚弱体質」の烙印も…米球団むしろプラス評価でゾッコンの理由

    ロッテ佐々木朗希 日本では「虚弱体質」の烙印も…米球団むしろプラス評価でゾッコンの理由

  1. 6
    なぜ大谷はオールスターで「最多得票」を取れないのか…圧倒的成績を残しながら首位と26万票の大差

    なぜ大谷はオールスターで「最多得票」を取れないのか…圧倒的成績を残しながら首位と26万票の大差

  2. 7
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  3. 8
    杉咲花&若葉竜也「親密報道」後も評価上昇 「アンメット」の演技にはゴシップを超える力がある

    杉咲花&若葉竜也「親密報道」後も評価上昇 「アンメット」の演技にはゴシップを超える力がある

  4. 9
    ドトールに注がれる「石丸効果」都知事選でヒモ付き隠さず3番手から猛追、株価も爆上がり

    ドトールに注がれる「石丸効果」都知事選でヒモ付き隠さず3番手から猛追、株価も爆上がり

  5. 10
    まるで大使館…剛力彩芽&前澤社長の“100億円豪邸”を発見

    まるで大使館…剛力彩芽&前澤社長の“100億円豪邸”を発見