「ダブルターゲット 二重標的 東京ベイエリア分署[新装版]」 今野敏著

公開日: 更新日:

 今野敏といえば、警察小説の第一人者。警視庁強行犯係・樋口顕シリーズ、警視庁捜査一課・碓氷弘一シリーズ、横浜みなとみらい署シリーズ、隠蔽捜査シリーズ等々、数多くの警察小説シリーズを世に送り出している。本書は、〈安積班シリーズ〉と称される、安積剛志警部補率いる刑事課強行犯係安積班が活躍するシリーズの第1作。

【あらすじ】東京第一方面本部の20番目の警察署、東京湾臨海署。通称、ベイエリア分署。東京湾の開発が進み、湾岸道路網の整備によって既存の警察署では対応できない犯罪が増加する恐れがあったために新設された。

 同署の刑事捜査課は旧来の所轄署と管轄が重なるため、応援に駆けつけるという現場の刑事にとってはあまり面白くない立場に追いやられることが多い。刑事課強行犯係には、安積警部補(係長)を班長として、村雨、須田、黒木、桜井、大橋という総勢6人の小さな所帯。

 事件が起きたのは、若者が集まるライブハウス。殺されたのは30代のホステスで、死因は青酸カリ。この女性はなぜ場違いとも思えるこの店にいたのか。疑問に思った安積は別の殺人事件を報じる新聞記事を目にして引っかかりを覚える。さらに調べると2つの全く異なる事件に接点が見いだされた。無差別殺人との見立てをする本庁とは別に、安積らは独自の捜査を進めていく……。

【読みどころ】合同捜査本部で部下の桜井が電話番に回されたことに憤って所轄の刑事に文句を言うなど、部下思いで自らの矜持を貫く一方で、少人数でやりくりをしなければいけない中間管理職の悲哀を秘める安積のキャラクターがくっきりと描かれている。この後シリーズは、神南署、再び臨海署と舞台を変えながら長寿シリーズとなっていく。 <石>

(角川春樹事務所770円)

【連載】文庫で読む 警察小説

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  2. 2

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  3. 3

    「かなり時代錯誤な」と発言したフジ渡辺和洋アナに「どの口が!」の声 コンパニオンと職場で“ゲス不倫”の過去

  4. 4

    中居正広氏「性暴力認定」でも擁護するファンの倒錯…「アイドル依存」「推し活」の恐怖

  5. 5

    「よしもと中堅芸人」がオンカジ書類送検で大量離脱…“一番もったいない”と関係者が嘆く芸人は?

  1. 6

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  2. 7

    入場まで2時間待ち!大阪万博テストランを視察した地元市議が惨状訴える…協会はメディア取材認めず

  3. 8

    米国で国産米が5キロ3000円で売られているナゾ…備蓄米放出後も店頭在庫は枯渇状態なのに

  4. 9

    うつ病で参議員を3カ月で辞職…水道橋博士さんが語るノンビリ銭湯生活と政治への関心

  5. 10

    巨人本拠地3連敗の裏に「頭脳流出」…投手陣が不安視していた開幕前からの懸念が現実に