「牧野富太郎の植物図鑑」高知県立牧野植物園監修 保谷彰彦植物監修
「牧野富太郎の植物図鑑」高知県立牧野植物園監修 保谷彰彦植物監修
日本初の本格的な植物図鑑を出版した博士は、植物の「真の姿」を伝えるべく、植物画を描くことにも才能を発揮した。
観察力の深さと描写の精密さに優れ、植物の個体だけでなく、「種」の典型的な形態、花や果実の部分図、葉脈の形や各成長段階にいたるまで緻密に描かれたそれらは「牧野式植物図」と言われ、1700枚ほど残されている。
博士は、さらに原図を忠実に再現するため、石版屋で石版印刷の技術まで習得したという。
本書は、その牧野式植物図を紹介するビジュアルブック。
1880(明治13)年、18歳のときに描いた「ギンリョウソウ」にはじまり、87年に高知県で発見して和名をつけたユリ科の「ジョウロウホトトギス」や、牧野式植物図確立の重要な役割を果たし、博士の名を世界にとどろかせるきっかけとなった食虫植物「ムジナモ」、そして戦時中の昭和20年に疎開先の山梨県で描いた菌類の「コウタケ」まで。
学術用途にとどまらず、芸術作品のように洗練された図の数々で、博士の人生の軌跡をたどる。
(三才ブックス 1980円)