「世界を変えた100の化石」ポール・D・テイラー、アーロン・オデア著 真鍋真監修、的場知之訳
「世界を変えた100の化石」ポール・D・テイラー、アーロン・オデア著 真鍋真監修、的場知之訳
化石には地球における「一度きりの進化の過程」が記録されている。諸科学が進歩した今日でも、地球上の生物がどのように進化してきたのかを知るには化石という証拠に頼るしかないという。
本書は、生命の誕生から現生人類の出現までの生命史を、節目となる化石を紹介しながら解説したビジュアルブック。
地球に最初の生命が誕生したのは約39億年前とされるが、現在のところ、その姿を今に伝える最古の化石は、先カンブリア時代の34億6500万年前のもの。
その「エイペックス・チャート」は、現代のシアノバクテリアに似た極めて小さな化石だ。幅が1ミリの100分の1という微細な糸状構造の化石は、肉眼では観察できず、岩石を光が透過する薄さにスライス、顕微鏡で観察して見つかったという。
地球の生命史において最重要の化石のひとつが「ストロマトライト」だ。
シアノバクテリアなどの微生物が堆積物を取り込みつなぎ合わせて形成したもので、地層のように幾重にも層をなす。
浅い海で光合成するストロマトライトが放出した酸素は、海中の鉄と結合、不溶性の酸化鉄となり海底に沈殿し、現在も残る鉄鋼脈をつくり出した。
さらに、海中の鉄が使い果たされると、酸素は大気中に放たれ、「大酸化事変」を引き起こした。
大酸化事変によって、のちに登場する生物の進化の条件が整ったのだ。
以降、ペルム紀末の史上最大の大量絶滅の後に繁栄した「三畳紀の微小巻き貝」や、脊椎動物として初めて空に進出した「翼竜」、そして我々ホモ・サピエンスとネアンデルタール人の共通の祖先である「ホモ・ハイデルベルゲンシス」の化石まで。
知的好奇心をくすぐる100の化石で地球の生命のドラマをたどる。
(エクスナレッジ 1980円)