不登校問題を考える本特集 「学校に行きたくない」と言われたら…
「コミックエッセイ不登校日誌」観世あみ著
「不登校」の子どもはなんと24万5000人! そんな「不登校」の当事者を理解するための本や、対応に悩む人たちへのアドバイスを載せた本を紹介しよう。
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「コミックエッセイ不登校日誌」観世あみ著
祖母も母も教師だったが、教師には絶対なりたくないと思っていた「かな」。マンガ家を目指していてコンテストにも入賞したのに、父に反対され、中学の美術教師になった。
初任者なのに、いきなり担任に! 隣のクラスには、小学3年生のときから不登校になっているスミダという男子生徒がいる。そのスミダの親から、名簿から名前を消してほしいと連絡があり、教材に授業内容を漏らさず書いたメモを用意してほしいとの要望が。担任のチアキ先生の苦境を見かねたかなは、美術は要らないと言われながら、美術のメモを作成する。ある日、スミダからお礼の手紙が届いた。
教師経験のあるマンガ家が書いたコミックエッセー。「不登校」から「復学」までの流れや、校内の不登校対応チームとはどんなものかなどの説明、現役教師のアドバイスも入っている。
(廣済堂出版 1760円)
「いい子症候群の若者たち」金間大介著
「いい子症候群の若者たち」金間大介著
「いい子」は協調性があり、一見、爽やかだが、言われたことはやるけど、それ以上のことはやらない、人の意見はよく聞くが、自分の意見は言わない、などの行動原則がある。
今の大学生が嫌うのが、講義で当てられることや、成績上位者が公開されること。分からなくても質問はしないが、ハンドルネームを使って質問にスマホで答えるのは匿名性が保たれるのでかまわない。自己肯定感が低いので、人前で褒められるとプレッシャーになってしまう。
彼らは独特の横並び意識をもっていて、分配方法についてのアンケートで、意外な結果が出た。最も公正だと評価されたのは、性別や能力に関係なく一律に分配する「平等分配」で、必要性に応じた「必要性分配」は「努力に応じた分配」や「実績に応じた分配」より低く、最下位だったのだ。
目立ちたがらない若者への処方箋を紹介する。
(東洋経済新報社 1650円)
「学校に行けない子どもの気持ちがわかる本」今野陽悦著
「学校に行けない子どもの気持ちがわかる本」今野陽悦著
不登校の子どもの親は「子どもが何を考えているかわからない」という不安を抱えている。自分の育て方が悪かったなどと考えがちだが、そうではない。
自分の子どもであっても「他者」であることを認識し、ありのままの子どもを受容することが必要である。そのためには、まず親が自分を受容すること。「こんな自分でもいい」と受容できれば、子どものことも受け入れられるようになる。
子どもには「集団タイプ」と「個人タイプ」があるので、まず自分の子どもがどちらなのか見極めることが大切。自分はこう考えているけど、子どもは違うかもしれないと気づくことで、適切な関わり方ができるようになる。不登校の子どもは、親と子のタイプが違うケースが多い。
親が子どもの「居場所」になるためのステップをわかりやすく解説。
(WAVE出版 1650円)
「不登校 親子のための教科書」今村久美著
「不登校 親子のための教科書」今村久美著
NPO法人カタリバ代表理事を務めていた著者は、島根県雲南市の教育長から、親や教師のようなタテの関係でもなく、友だちのようなヨコの関係でもない、「ナナメの関係」で地域の不登校問題に取り組んでほしいと頼まれた。
学校が子どもにとって「行かなければならない場所」でなく、「行きたい場所」にするにはどうしたらいいのか。登校はしても保健室登校だったり、教室にいても授業に参加しない生徒もいる。不登校の生徒がその理由を言葉で説明するのは難しい。腹痛などを訴えることも多いので、原因の究明よりも、まずは休ませてあげることだ。
不登校の子をもつ親が相談できる自治体の「教育相談センター」や、ストレスを感じている子ども向けに、ストレスの小さい定時制高校や通信制高校なども紹介。
頼りになるガイドブック。
(ダイヤモンド社 1540円)
「教室を生きのびる政治学」岡田憲治著
「教室を生きのびる政治学」岡田憲治著
40人のクラスで全員に対応できるわけがないから、立派な人間になるという努力はしない。それよりも「安全なキャラ設定を選択して、慎重にそれを演じて、面倒な波紋を起こさないエリア」を確保することが重要だ。
不登校の生徒がいると、苦しみやつらさはみんなが平等に引き受けるべきなのに、それをしないのはズルいと考える者もいる。だが、そんなにつらいなら、学校など行かなくてもいい。学校は人間が命をかけて行くようなところではないからだ。
人間に必要なのは楽しい居場所で、学校(会社)も家もつらかったら、サードプレイスが必要になる。それを強調しなくてはいけないのは、この国がセカンドチャンスを与えてくれない国だからなのだ。
学校で生きのびるタメに、日常の生活空間に「半径5メートルの安全保障」を提唱する。
(晶文社 1870円)