「見て楽しむことば図鑑」みっけ、天野慶著
「見て楽しむことば図鑑」みっけ、天野慶著
受け取った名刺に「白」と書かれていたら、あなたなら何と読む。「はく」さんか、「しろ」さんか? 同じく「前」さん、「台」さんなど。よく知る漢字でも、全く知らない読み方になる言葉がある。
一方、「花の兄」「清客」「木母」は、すべて同じ花の異名なのだが、お分かりだろうか(答えは文末に)。
普段は、自分の限られたボキャブラリーで生活していても何の不自由もないが、新たな言葉を知れば表現力が広がり、別の世界が見えてくる。
本書は、そんな豊かな表現を可能にしたり、言葉のセンスを磨くのにぴったりの図鑑。言葉を扱っているのに、なぜ辞書ではなく図鑑なのか。
それは、テーマごとにそのテーマに合ったフォントやデザインが用いられ、視覚からもインスピレーションを得られるようになっているからだ。
例えば、色の名前を集めたページは「絵の具チューブ」を、「祈ることば」を集めたページは絵馬を、そして「ごはんのことば」には鍋をデザインに用いるなど、見ているだけで楽しくなってくる。
「太陽のことば」をテーマにした章では「金烏」や「飛輪」など、太陽そのものを表す言葉から、「日華」や「慈光」など、太陽の光を表す言葉、「仄日」など西に傾いた太陽の光、太陽が沈んでも残る光を意味する「残霞」など、シチュエーションごとに35語も載っている。
ほかにも、各季節や水など「自然に関することば」にはじまり、涙のことばや、恋と愛のことばまで100のテーマで、実に4190語を収録。
楽しいデザインと知らなかった言葉との出合いに、ついつい時間が経つのも忘れてしまう。
ちなみに答えは「白=つくも」さん、「前=すすめ」さん。「台=うてな」さん。「花の兄」以下すべて梅の異名だそうだ。
(幻冬舎 1870円)