「生命の時間図鑑」ヘレン・ピルチャー著、吉井大志翻訳・監修

公開日: 更新日:

「生命の時間図鑑」ヘレン・ピルチャー著、吉井大志翻訳・監修

 地球上のすべての生き物は、時間という制約から逃れることはできない。一方で、生き物それぞれに流れている時間は、決して同一のものではないらしい。ある種の動物は、必要に応じて時間の認識を変化させているという。

 捕食者から早く逃げることが必要な動物や、逆に動きが速い獲物を捕らえる動物は、時間をゆっくりと認識することで、素早く反応することができるのだそうだ。

 例えば、あるメカジキは、狩りの前に脳の血流を増加させることによって、時間の感覚がゆっくりとなり、1秒間に処理できるフレーム数が増加。逆に狩りをしないときは同じ1秒間でも処理できる情報量が減るために時間の流れが速くなるという。

 本書は、このように、地球上に生きる動植物たちがどのように時間を刻んでいるのかを視覚化して教えてくれるサイエンステキスト。

 まずは「進化の時間」。ご存じのように、進化は途方もない時間を必要とするが、中には人間が一生の間に確認できるほど猛スピードで進化した生き物もいた。「オオシモフリエダシャク」という蛾は、産業革命で起こった急激な環境変化と、その後の環境保護による大気の浄化に合わせて、次々と進化を遂げたという。

 また、捕獲時の年齢が392歳と算出された最も長生きする脊椎動物「ニシオンデンザメ」に対し、最も短い種では成虫の寿命がわずか5分未満というカゲロウなどを紹介する「寿命の時間」。

 そして、クジラは30秒以下なのに対してチョウチンアンコウは2年以上もつながりっぱなしという交尾などの「行動の時間」、なのになぜか排便にかかる時間は体の大小にかかわらず約12秒という「体内の時間」など、テーマごとに解説。

 誰かに話したくなる面白エピソードが満載だ。 (グラフィック社 2640円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高嶋ちさ子「暗号資産広告塔」報道ではがれ始めた”セレブ2世タレント”のメッキ

  2. 2

    フジテレビ「第三者委員会報告」に中居正広氏は戦々恐々か…相手女性との“同意の有無”は?

  3. 3

    大阪万博開幕まで2週間、パビリオン未完成で“見切り発車”へ…現場作業員が「絶対間に合わない」と断言

  4. 4

    兵庫県・斎藤元彦知事を追い詰めるTBS「報道特集」本気ジャーナリズムの真骨頂

  5. 5

    歌手・中孝介が銭湯で「やった」こと…不同意性行容疑で現行犯逮捕

  1. 6

    大友康平「HOUND DOG」45周年ライブで観客からヤジ! 同い年の仲良しサザン桑田佳祐と比較されがちなワケ

  2. 7

    冬ドラマを彩った女優たち…広瀬すず「別格の美しさ」、吉岡里帆「ほほ笑みの女優」、小芝風花「ジャポニズム女優」

  3. 8

    佐々木朗希の足を引っ張りかねない捕手問題…正妻スミスにはメジャー「ワーストクラス」の数字ずらり

  4. 9

    やなせたかし氏が「アンパンマン」で残した“遺産400億円”の行方

  5. 10

    別居から4年…宮沢りえが離婚発表「新たな気持ちで前進」