SNSから日常会話まで日本語を学びなおす本特集
「世にもあいまいなことばの秘密」川添愛著
SNSの登場によって日本語が加速度的に変化する今、日々のコミュニケーションにも注意が必要。会話や文章で毎日使う日本語について、改めて学んでみてはいかがだろう。
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「世にもあいまいなことばの秘密」川添愛著
私たちが日常で口にする言葉のほとんどは曖昧で、複数の解釈を持つ。しかし、私たちはそのことに気づかず、頭に浮かんだものを「たった1つの正しい解釈」と思い込む傾向があるという。そんな言葉のすれ違いの事例を紹介しながら、日本語の複雑さや面白さを解き明かしていくテキスト。
例えば「同音異義語」。「こうしょう」という音を持った語は、「交渉」「高尚」「公称」など50個近くもあるという。これらは漢字で書くことで曖昧さが解消されるが、漢字を使えば曖昧ではなくなるというわけでもない。「人気がない」という言葉も文脈が分からなければ、誰かについて「人気がない」と言っているのか、どこかの場所について「人気がない」と言っているのか分からない。
こうした表記の曖昧さから、「冷房を上げて」は、室温を下げるのか上げるのかどちらを意味しているかなど、日本語のさまざまな曖昧さを解説しながら、言葉の不思議に迫る。
(筑摩書房 990円)
「新聞社デスク流 熱血作文教室」中村正憲著
「新聞社デスク流 熱血作文教室」中村正憲著
現在は大学で学生の指導もしている元新聞記者による文章術指南書。
これまで学生たちが書いた1300編もの作文を添削してきた氏によると、理解しにくい文章には共通する「失敗」があり、そこを修正するだけで文章は劇的に変わるという。そうした学生たちの作文を例にして、共感を呼び起こす文章を書く技を教えてくれる。
読む気が失せる文章には、「見出しが平凡、意味不明」「一文が長い」「漢字が多すぎる」という3つの特徴があるという。
まずは「ふるさと」をテーマに学生たちが書いた作文の見出しを並べ、それぞれについて論評。その中から、最優秀作のひとつという作文の全文を紹介して、その優れている点を解説。
ほかにも、「なので」「ちゃんとした」などの話し言葉の使用や、文章が長い人に目立つ接続助詞「が」の多用などの陥りやすい失敗から小論文の書き方まで。みるみる上達する文章術のイロハを伝授。
(関西学院大学出版会 1760円)
「じつは伝わっていない日本語大図鑑」山口謠司監修
「じつは伝わっていない日本語大図鑑」山口謠司監修
アナログ世代とスマホ世代の若者たちとの会話で、かつては当たり前のように通じた日本語がむなしく空回りすることが最近増えているという。
例えば、上司が「出張お疲れさま。1日延びたから足が出たんじゃないか」と部下をねぎらったところ、「はい。急きょ取った宿の布団が小さく、足先が出てよく眠れませんでした」と返ってきたりするらしい(実話)。
ほかにも、会議中に「船を漕ぐ」とか、男女の仲に「秋風が吹く」、相手に「花を持たせる」など。言葉の裏にもうひとつの意味を含ませる言い方などは、SNSで短い表現だけで用件を済ませる若者らには通じないという。
さらに問題なのは、年配者が自分の言葉が相手に伝わっていないことに気づいていないことだ。
こうした世代間のコミュニケーションの溝を埋めるべく、若い世代が混乱するアナログ世代がよく使う言葉を集めて解説した面白イラスト図鑑。
(東洋経済新報社 1540円)
「ていねいな 文章大全」石黒圭著
「ていねいな 文章大全」石黒圭著
文章を書く上で大切なことは、最後まで読んでもらえる文章を書くこと。途中で読むのをやめたくなる文章とは「不正確な文章」「わかりにくい文章」「不快な文章」「退屈な文章」だという。
例えば、公園で見かける「他人に危害を及ぼす恐れがある花火は禁止です」という看板。わかりにくい文章の一例で、この文では、花火はすべて禁止という全面禁止の解釈と、花火の中で他人に危害を及ぼす恐れのあるものは禁止という条件付き禁止の解釈の両方が成り立つ。読者は、意味が曖昧だったり難しかったりするところがあると、自分の都合に合わせて解釈したり、読むのを放棄してしまったりする。
本書は最後まで気持ちよく読んでもらえる文章を書くスキルが身につけられるトレーニング本。「ご好意に感謝申し上げます」「事前予約をお願いします」「お客さまが申された内容については~」など、つい使用してしまうような文章を例文として取り上げながら、108ステップであなたを文章の達人に導いてくれる。
(ダイヤモンド社 2860円)