「ジョーカー」になった男のその後

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「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」

 かつて日本映画界は続編やシリーズものが主流だったが、いまはほんの一部に過ぎなくなった。他方、昔の米映画界は続編をあれほど小バカにしたのに、いまやフランチャイズと称する二番煎じだらけだ。

 そんな中、続編なんか作ってほしくないなあと思っていた映画の続編が登場する。今週末封切りの「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」だ。

 5年前の「ジョーカー」はヒットもしたが、騒ぎにもなった。日本でも影響されて私鉄車内の殺人未遂事件まで起こったのは周知だろう。

 貧しい母子家庭に育った男の怒りがみじめな境遇のどん底で暴発し、連続殺人鬼に化けてゆく。こうまとめると陳腐なプロットに見えるが、監督のトッド・フィリップスは現代ならではの味つけで「バットマン」シリーズの単なるスピンオフとは異質の物語に仕上げた。格差社会のヒガミ・ネタミ・ソネミが織りなす怨恨のトライアングルがやすやすと陰惨な猟奇性と結んで、現代という時代の不幸をうがつ。嫌な話だが、ある種の人間を引きつける力があるのはわかるという注目作だった。

 改めて振り返ると監督はおバカ映画の「ハングオーバー」シリーズをヒットさせた典型的な娯楽作家。ただし、アメリカ文化の底を流れる女嫌いの心性をうかがわせる点で奇妙な粘着気質もかいま見せた。今回の「ジョーカー」続編はそれが思いがけないかたちで通奏低音となり、現代の絶望を別角度から照らす幕切れへとつながってゆくのである。

 なるほど確かに現代のアメリカは、病み苦しんでいる。デイヴィッド・フィンケル著「アメリカの悪夢」(亜紀書房 2860円)はイラク戦争から復員退役した陸軍大佐が、トランプのような男を国家元首にした祖国で苦しむ姿をたどるノンフィクション。両者とも表面は似ていないのに、底に潜む懊悩が響き合う。悲しい現代のアメリカだ。 <生井英考>

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