個性派・佐藤二朗のブレークは堤幸彦監督の演出感覚のおかげ

公開日: 更新日:

 そんなわけで、この出演をきっかけに劇場からテレビや映画の世界にシフトでき、顔を覚えてもらえるようになりました。とはいえ面と向かって「アナタが恩人です」とは、媚びている感じでヤラしいし、言うべきではないと僕は考えていたんですよね。ところが、数年前、ご本人の前でうっかり「堤さんは僕の恩人だ」と口が滑っちゃった。すると、堤さんは「え? 何で何で?」と。

 作品に必要なシーンだからという観点でしか考えないようにされているのか、あえて監督という権力に甘んじないようにしているのかわかりませんが、インタビューで僕のことを話していた時に、「従来のエンタメの隙間を埋める役者。だから、同時多発的に起用したんじゃないか」ってうれしいコメントしてくださったんです。オレのおかげだなんて顔は一切しなかった。そこがまたカッコよくて。

「20世紀少年」のような大作を撮影した後、堤さんはドキュメンタリータッチの小規模作品を作ったり、常に期待を裏切っていく。規模も環境も全然違うのに、どれも堤さんの世界観がにじみ出ている。いい年したオッサンでこれだけアグレッシブに生きているのは本当に凄い。以前、撮影の合間に堤さんが「この10年、前衛的なこと、やりたいこと、客が分かることの妥協点を探っていた気がする」と話していたのを聞き、なるほどと納得した。劇団ちからわざの主宰として、自分もそうあらねばと身が引き締まります。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  2. 2

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  3. 3

    松本人志は勝訴でも「テレビ復帰は困難」と関係者が語るワケ…“シビアな金銭感覚”がアダに

  4. 4

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  5. 5

    貧打広島が今オフ異例のFA参戦へ…狙うは地元出身の安打製造機 歴史的失速でチーム内外から「補強して」

  1. 6

    紀子さま誕生日文書ににじむ長女・眞子さんとの距離…コロナ明けでも里帰りせず心配事は山積み

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    メジャー挑戦、残留、国内移籍…広島・森下、大瀬良、九里の去就問題は三者三様

  4. 9

    かつての大谷が思い描いた「投打の理想」 避けられないと悟った「永遠の課題」とは

  5. 10

    大谷が初めて明かしたメジャーへの思い「自分に年俸30億円、総額200億円の価値?ないでしょうね…」