ドラマ「かもしれない女優たち」が醸す後味のいい“並行世界”
【連載コラム 「TV見るべきものは!!」】
ドラマ「素敵な選TAXI」(関西テレビ・フジテレビ系)の脚本で、第3回「市川森一脚本賞」の奨励賞を受賞したバカリズム。23日に放送された単発ドラマ「かもしれない女優たち」も、受賞作同様、“人生の岐路と選択”というテーマに挑んだ野心作だ。
ヒロインは竹内結子、真木よう子、水川あさみの3人。女優として成功している彼女たちが、「あり得たかもしれない、もう一つの人生」を競演で見せるところがミソだ。たとえば竹内本人は15歳で事務所にスカウトされたが、もしもそれを断っていたらという設定。大学を出て編集者になった竹内は、恋人との結婚を望みながら、なかなか実現できないでいる。
また女優志望の真木と水川は、バイトを続けながらオーディションを受けては落ちる日々だ。もうあきらめようかと思っていたころ、思いがけない出来事が起きる。
エキストラ扱いで、顔も映らない端役を務める現場。邦画を見るとミジメな気分になるからと、レンタル屋で洋画ばかり借りる日常。いきなり売れっ子となった新人女優への複雑な思い。バカリズムの脚本は、芸能界のリアルを苦笑いのエピソードで描いていく。
3人の女優、それぞれの軌跡と個性を生かした物語だからこそ、本人たちが演じる「あり得た自分」が絶妙に絡み合い、後味のいいパラレルワールドが成立していた。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)