中森明夫氏 川島なお美さんを追悼「僕たちの世代の女神です」
97年、ドラマ「失楽園」で体当たり演技、古谷一行と素っ裸で草原を突っ走るシーンは視聴者のドギモを抜いた。「子宮が呼吸できなくなるから前貼りしないの」と衝撃発言。その年、時代の寵児となったなお美サマの写真撮影に立ち会った。カメラマンは巨匠・篠山紀信。目白の古いお屋敷に現れた川島なお美は異様なオーラを帯びていた。篠山の指示で縁側に寝そべり、羽織った着物がはだけると、モワ~ンとその場が強烈なフェロモンに包まれた。こ、これは……赤ワインの香りだ!!
撮影の合間に私は彼女に声をかけた。
「なお美さんは僕たちの世代の女神です! ミスDJの頃から、どれだけお世話になったことか!!」。すると寝そべっていた彼女は、むくりと顔を上げ、微笑みながら「聴くっきゃな~い!」と叫んだ。女子大生の頃のあの甘ったるい女の子の声のまんまだった。
川島なお美さん。旦那様の鎧塚俊彦さんが言うように、あなたは「最後まで女優・川島なお美」だった。立派だった。美しかった。こんなにも長く脚光を浴び、愛され続けた人もそうはいない。「さよなら」は言いません。「ありがとう」と言わせてください。僕たちの生きる時代をこんなにも色っぽく、華やかに照らしてくれた。あなたは、我らの世代が誇りとするもっとも美しい女の子でした。
川島なお美さん、ありがとう!!
▽なかもり・あきお 作家、アイドル評論家。1980年代に新人類の旗手と呼ばれる。「おたく」の命名者でもある。最新刊は「寂しさの力」(新潮新書)。