ブルースシンガー大木トオルさん “セラピー犬”育成に尽力
加えて、大木さんは殺処分されそうになった捨て犬や福島の被災犬を救助・保護している。
「東日本大地震の直後に福島に行き、飼い主をなくしたばかりか、被曝し続ける犬たちの姿にショックを受け、夢中で救出しました。この5年間で50頭ほど連れ帰り、みんな立派なセラピードッグに成長した。被災犬を最後の一頭まで救うのが私の願いです」
なぜ、そこまで犬の救助に力を入れるのか。
「4歳のころ、私は吃音症でうまく人とコミュニケーションが取れず、唯一、飼い犬だけが友達でした。人間と違い、言葉が出るのを待ってくれるんです。12歳の時に父の事業が失敗し、一家離散したんですが、心底、愛犬との別れがつらかった。“新しい飼い主を探すから”と、叔父は言ってくれたけど、おそらく保健所に連れて行かれたのでしょう。その負い目がずっと心の重荷になっていたんです」
アメリカでの音楽活動中にセラピードッグの存在を知った大木さんは、ライフワークとして普及に努め、92年に殺処分寸前だった捨て犬チロリとの出合いをきっかけに、より積極的にセラピードッグ育成に取り組むようになった。