<下>高齢者ドライバー事故報道は、本音をいえば迷惑な話
最近は、高齢ドライバーによる事故が起こると、新聞やニュースで大々的に取り上げますよね。本音をいえば、迷惑な話です。僕も含め、車を運転している高齢者は少なからず、軽い罪の意識はあると思うんです。遠慮しながら運転しているんです。それでも事故が発生すれば、年齢と結びつけたがる。そんな昨今の報道を見て、同世代の友人は、運転しようとすると背中が緊張するって嘆いていました。いまの世の中の風潮、問題提起の仕方が、果たして正しいのか。山田監督は、そんなナイーブな問題を見事に喜劇の作品に落とし込んだ。改めて監督の脚本とセンスに感服しました。
今作では、無縁社会における死についても問いかけています。西洋映画でも、ヒチコックなどが死体を扱った喜劇をつくっていますが、人間が根本的に抱えている死や生命の怖さをちょっとひねれば、笑いにつなげることができる。人間は本来、怖いことを忘れて笑いたくてしかたがないはず。年を重ねれば重ねるほどその思いは強まります。僕も死について考えますよ。もっとも小っちゃな人間なので、このままジタバタし続けるんでしょうね。この年になっても、いちびる自分をどこか俯瞰しながら、死ぬまで役者人生を全うしたいと思います。
(おわり)
▽はしづめ・いさお 1941年、大阪府出身。文学座、劇団雲を経て、75年に演劇集団円の設立に参加。以降、舞台・映画・テレビ等幅広い分野で活動。27日、主演作「家族はつらいよ2」(山田洋次監督、松竹系)が公開。