女優・劇作家 渡辺えりが危うい現代社会への警鐘を鳴らす
「紅白」に触発された旗揚げ公演
23歳のときの旗揚げ公演「モスラ」は一度は中止にしようと思ったくらい書くのに苦しんだ作品でした。
それが、たまたま紅白歌合戦で由紀さおりさんが歌った「トーキョー・バビロン」に触発されて一気に筆が進んだ。
バビロンとはバベルの塔のこと。天に届くような塔から見下ろせば、庶民なんかはちっぽけな存在で、事故で犠牲者が出ようが、権力者にとってはどうでもいい。そんな「塔」への疑問を込めた作品だったのですが、40年後にまた同じモチーフの作品に取り組んでいる。まるで原点に立ち返ったようで、不思議な気持ちです。
キョンちゃん(小泉今日子)とは、彼女が16、17の頃からのお付き合いです。ドラマ撮影の休憩時間に出演者の人たちにお茶をつぐような謙虚さがあるし、庶民的で、意外に力持ち。昔は私が演技の助言とかいろいろしてましたが、今は逆に人生について助言してもらう関係。以前、不要になったステージ衣装を段ボールに詰めて、自宅まで運んでくれたことがありました。4箱くらいあったかな、1人で階段を使って3階の事務所まで運んでくれて。
前から私の作品にも出演を頼んでいます。そのうちさまざまな役を歌い演じる役をやってくれるかも知れません。
この3月から日本劇作家協会の会長として働いています。まず最初に取り組んでいるのはセクハラ問題です。
今、世界中で「♯MeToo」運動が行われていますが、実は演劇の世界はセクハラ問題で一番遅れてる気がします。男性社会ですからね。まずは勉強会からのスタートです。65歳までは頑張って、次の世代にバトンタッチしたいと思っています。
最近は体も前より動くし、セリフも人の分まで覚えられる。絶好調なんですよ(笑い)。
今回の舞台は、40周年ということで、4000円の席もたくさん用意しました。生バンドの演奏もあり、出演者の顔ぶれを見てもこの料金はあり得ないと思います。ぜひ見に来てほしいですね。
◆おふぃす3○○「肉の海」は6月7~17日、下北沢・本多劇場。出演=青木さやか、尾美としのり、久世星佳、土居裕子、ベンガル、三田和代、渡辺えりほか。℡03・6804・4838