「されど魔窟の映画館」荒島晃宏著
「されど魔窟の映画館」荒島晃宏著
失業保険で食いつないでいた映画技術者の著者は、2004年11月、元上司の紹介で浅草の映画館・中劇会館に入社。アニメ脚本家としても活動をしていた著者は、相場取引で借金を抱え、背水の陣での再就職だった。
新しい職場にもようやく慣れてきた2週間後、突然、隣接する系列の新劇会館への異動を命じられる。新劇会館では古い日本映画の上映館とピンク映画の上映館の3館が稼働し、なぜか平日の昼間から入場客が多い。女装客などもいて、すぐにここが同性愛者がパートナーを探す「ハッテン場」であることに気づく。同僚によると、海外の同性愛者情報誌でも紹介される、そのスジでは有名な国際的な映画館らしい。
本書は、その魔窟のような映画館で過ごした8年間を記録した回想記。
(筑摩書房 990円)