裏口疑惑の情けなさ笑う…爆問・太田の父親譲りの業と矜恃
彼がまだ子供だった頃のある日、両親と太田の3人で家族旅行に出かけたことがあったという。父は、車の運転が好きだった。けれど、下手。だから、太田はすぐに酔って気持ち悪くなるのが常だった。
その日、父の運転する車が急に止まった。前を走る車が止まったからだ。何をやっているのだろう、とのぞき込むと、前の車とさらに前の車を運転していた人が、もめだした。一番前の車がヤクザ者で「テメエ、このヤロウ!」と相手をバコバコと殴り始めたのだ。
しばらく息を潜めて見守っていた父は、車が行き去った後に言った。
「あぁ、怖かったなぁ。俺なんかブルブル震えちゃってさ」
その言葉を聞いて母は「情けないわねえ、あんた」と笑ったが、太田はそんな父親がなんだか面白く、逆にカッコいいと子供心に思った。
戦争の話をする時もそうだった。父は「俺、ヤでさぁ。だって、タマとか当たったら絶対痛いだろ!」と言う。どこまでも弱さに正直な人だったのだ。
「無理してアメリカみたいにマッチョみたいなフリしてもしょうがねえだろって。なんか、それが僕は根っこにあるような気がします」(同前)
そんな父の姿に、太田の立ち居振る舞いの美意識の在りかがあるような気がしてならない。「裏口」なんてレッテルを貼られるのは情けなくて嫌だと嘆きながらも、その情けなさごと笑い飛ばすその姿勢こそ父親譲りの太田の業と矜持だ。