「ディア・ハンター」ロシアンルーレットを楽しむベトコン

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 サイゴン陥落で米国が敗北したのは1975年4月。帰還兵は戦争支持派から「なぜ負けた」となじられ、反対派から「赤ん坊殺し」と非難された。国内に不満が充満する。だが敗戦からまだ3年だ。ベトナム戦争を聖戦とするのは憚られる。だからベトコンを野蛮人にして留飲を下げたのだろう。

 米国の若者がPTSDになったのは野蛮人のせいだ、俺たちは犠牲者なのだという論理。まるで日本のネット右翼だ。あの戦争はアジアを解放するためだった、日本は少しも悪くない、原爆を落とした米国が憎い――。

 本作への反発なのか、ハリウッドは「地獄の黙示録」(79年)や「プラトーン」(86年)で米兵の残虐行為を再現した。それでも「ランボー/怒りの脱出」(85年)のようなベトコン悪人説の作品は後を絶たず、試行錯誤の末、ハリウッドは新たな鉱脈を見つける。「プライベート・ライアン」(98年)に始まる第2次大戦もので米国の正義を堂々と主張したのだ。ベトナム戦争は映画界にも後遺症を残したことになる。

(森田健司)

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