映画監督・塚本晋也さん リアリティー追求し本物の武士に

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 例を挙げると、武士が家に入る時は刀を右手に持つのが作法です。それは利き腕の右手がふさがっていて、「戦う意思がない」ということを表すため。同様に着座の時も刀は右側に置きます。歩く時は左側通行。これはすれ違う際に互いの刀の鞘が当たって無用な争いになるのを防ぐためです。

 この写真の構えは居合の基本形「携刀姿勢」です。右手をダラリと下げ、刀の鍔をお腹の前に持ってきて左手親指を鍔にかけている。廊下のような狭い場所でも事があれば、すぐに抜刀できるようにとの必要性から生まれた形です。作法や所作はきれいに見せるのもさることながら、合理的な理由があるというのを知って新鮮でした。

 また、撮影時の殺陣は殺陣師の方にお願いしましたが、作品の中で池松さんと僕が持つ刀は、館長に立ち会っていただいて、役柄にふさわしいものを厳密に専門店で選んでいただきました。重量感や雰囲気が、簡単に手に入る模造刀とはまったく違うんですよ。

 わずか1カ月と短期間でしたが、道場に通ったのはすごくよかった。撮影が始まり、武士の一般的な振る舞い、作法をいちいち確認しなくてもよかったですからね。撮影を止めないでスケジュール通りに進めることができると、出演者やスタッフのモチベーションを維持できますし、予算的にもストレスがかかりませんから。もちろん、わずかでも本物の武士の姿を表現して、長年のテーマにしてきた生と死、戦争について迫ることができたと思っています。


■新作「斬、」公開中/舞台は幕末。主演・池松壮亮、共演は蒼井優。塚本監督は剣の達人役で出演。

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