芸術祭大歌舞伎 徹底した技巧で見せる脇役・歌六の存在感
昼の部、松緑は「御摂勧進帳(ごひいきかんじんちょう)」で弁慶、愛之助は「蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)」で5役早替わりと、別々に主演。どちらも見せ場の連続で視覚的に楽しめるが、それだけでもある。
さすがとうならせるのが、菊五郎の「江戸育お祭佐七」。2008年以来の上演だが、時蔵、団蔵ら主要な配役は前回と同じ。菊五郎劇団の破綻なきアンサンブルで、最初は華やかで楽しい世界が、救いようのない殺人へ転じていく悲劇が描かれる。この芝居は10年に1度くらいしか上演されないので、次は世代交代しているだろう。その交代すべき菊之助が同座していないのが残念。
今月は「蜘蛛絲梓弦」での右団次、「お祭佐七」での団蔵、「三人吉三」の歌六と、主役ではない脇役の存在感が目立った。
(作家・中川右介)