著者のコラム一覧
平野悠「ロフト」創業者

1944年8月10日、東京都生まれ。71年の「烏山ロフト」を皮切りに西荻、荻窪、下北沢、新宿にロフトをオープン。95年に世界初のトークライブ「ロフトプラスワン」を創設した。6月、ピースボート世界一周航海で経験した「身も心も焦がすような恋」(平野氏)を描いた「セルロイドの海」(世界書院)を刊行。作家デビューを果たした。

フラッと現れた森田童子の暗くて沈んだ歌声に恋心を抱いた

公開日: 更新日:

 手渡された一本のテープを聞いた瞬間、大きな衝撃が脳天を突き抜けるように走った。「なんて暗い歌なんだ!」。そう思いながら、じっくり歌詞を読み込むと<あの政治の季節>が、まざまざと思い出された。私たちが遮二無二に闘ってきた「大学闘争時代の挫折」をこれでもか! これでもか! と突き付けられた。「どうして彼女は挫折した者にしか分からない心情を歌詞にして歌えるのか?」。不思議でしょうがなかった。同時に大きな好奇心が芽生えた。

 学園紛争で高校を中退し、72年の友人の死をきっかけに自作自演で歌い始めたというが、それにしても<革命を叫びながら機動隊にやみくもに突撃していった>私自身の全共闘運動時代の原風景を想起させる歌に「この少女の過去に何があったのだろうか?」と思わないではいられなかった。

 暗くて、そして沈んだ歌声。そう言われていたが、個人的にはちょっと違う。あくまで<あの独特の雰囲気>が、そう思わせたのだろう。後で知ったが、恋人が学生運動中に自殺したという。

 彼女は、いつもロフトのステージの上で涙を流しながら歌っていた。

 私は、森田童子に恋心を抱いていた。

【連載】ロフト創業者が見たライブハウス50年

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議

  2. 2

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 3

    吉川ひなのだけじゃない! カネ、洗脳…芸能界“毒親”伝説

  4. 4

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  5. 5

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    木村拓哉"失言3連発"で「地上波から消滅」危機…スポンサーがヒヤヒヤする危なっかしい言動

  3. 8

    Rソックス3A上沢直之に巨人が食いつく…本人はメジャー挑戦続行を明言せず

  4. 9

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 10

    立花孝志氏『家から出てこいよ』演説にソックリと指摘…大阪市長時代の橋下徹氏「TM演説」の中身と顛末