<152>早貴被告は野崎さんの死も無感情で傍観者のように振る舞った
事件の取材をしていると、このような性格の犯人に出くわすことが、ままある。確たる証拠を突き付けられない限り「やっていない」と言い張り、自分を傍観者のように装う特徴がある、というか本当にやっていないと自分に暗示をかけて、それが本当だと信じ込ませる性格である。
ゴールデンウイークに東京を経由して札幌の実家に帰ると話している時も、そうだった。この時は、やはり東京に向かうドン・ファンとは別行動で、1人で南紀白浜空港から飛んだ。その空港で搭乗手続きを待つ早貴被告と話をした。
「羽田から乗り換えて札幌に行くんだろ」
「いいえ、姉のところに行ってから、翌日に札幌へ行きます」
同居していた早貴被告が田辺に嫁ぎ、看護師の姉は新宿に1人で暮らすことになった。
「1人で家賃払うのは大変だろうに」
「だから、横浜に引っ越しました」
「へえ、横浜のどこなの?」
「あれ? どこだっけかな?」