女優・柊子の転機 NHK朝ドラ出演の波に乗り切れず「私には覚悟が足りなかった」
「クラスメートの一人」でデビュー
ーー柊子さんが初舞台に立ったのは、ちょうどその頃、中学2年生ですね?
「はい。小学生の時から稽古場や演劇の世界が身近にある環境で育ったので、なんとなく自然の流れで。16歳の時に所属事務所のアイドルグループに1年間だけ在籍しアイドル活動もしたのですが、その後は、演技のほうにシフトするのと同時に、グループの楽曲の作詞を手がけるようになりました」
ーーその後、本格的な芸能界デビューは映画「那須少年記」(2008年公開)でしたね。
「主演の太賀さん(現在は仲野太賀として活動)はリハーサルの時からリードしてくださって、当時の私にはキラキラ輝いて見えました。私はメインキャストではなくクラスメートの一人として参加したのですが、下を向いてバミリ(演者の立つ位置を記すテープ)の位置を確認しながら歩くばかりで、カメラマンさんに怒られていました(苦笑)」
ーーそしてコツコツと場数を踏んでいき、2015年NHK朝ドラ「まれ」に出演し、日本全国の視聴者に顔が知れることに。世界一の菓子職人になる夢を抱くヒロイン(土屋太鳳)の修業先の先輩パティシエとして、ムッツリ顔で主人公をいじめる役を演じ、「あの女優さん、ダレ?」と話題になりました。
「本当に、本当に、大きな反響をいただきました。はじめて朝ドラに出させていただいて、朝ドラの威力を肌で感じました。朝ドラの出演中に新しいオファーをいただき、撮影の時期が重なる仕事もお受けしたり……。それはいままで経験したことのない、自分の目の前にとてつもなく大きな波が迫っている感覚でした。それなのに……その波に乗り切ることができなかった、チャンスをふいにしたという思いが、いまでも、ここ(両手で胸に手を当てながら)にあります」
■“見えない”声に押し潰されそうに…
ーー波に乗り切れなかったのはなぜ?
「私は自分が押し潰されてしまうのが分かっているので、エゴサーチはしない派なのですが、それでも友達や家族から多少なりとも情報は入ってきます。『まれ』に出演していた当時、私は肌荒れに対するコンプレックスがとてもあって、SNSなどでも容姿についてきつく書かれてしまった。自分の心の弱さがいけないのですが、そのことがトラウマになってしまって、このチャンスに身を委ねて頑張ったら今度はどんなふうに書かれるんだろうって考えたら、頑張る勇気が持てなかったのは、本当、情けないです」