「時代とFUCKした男」加納典明(7)一流には理由がある。それを知るか知らないか。畑さんにもそんな話をした
小説、ノンフィクションの両ジャンルで活躍する作家・増田俊也氏による新連載がスタートしました。各界レジェンドの一代記をディープなロングインタビューによって届ける口述クロニクル。第1弾は写真家の加納典明氏です。
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加納「僕が道具なんかにこだわるようになったのは、やっぱり1969年のニューヨークだったと思う。カメラとか金をかけて。うん。ハッセルブラッド*とかライカを使った」
※ハッセルブラッド:スウェーデンの高級カメラメーカー。第2次世界大戦のときに世界初の携帯小型一眼レフを開発した。戦後、アメリカで量産を開始し、6×6cmの世界的高級カメラとして普及した。
増田「なるほど」
加納「釣竿やリールだったらスウェーデンのアブ*とか。何でもそうだけど、例えば車でもそうだし、バイクでもそうだし。道具にしろ、人間にしろ、やっぱりトップっていうか、トップクラスっていうのと、『並』と言ったら失礼だけど、ごく標準的なものとはやっぱり違うよね」
※アブ:スウェーデンの釣具メーカー。リール中心のメーカーであったが後に竿製造も始める。現在の正式名は「アブ・ガルシア」。スウェーデンの釣具メーカー。1921年創業。製品にはスウェーデン王室御用達のマークが入っている。
増田「道具を手に持ったとき、あるいは人に会ったとき、感じるもの」
加納「そう。そこで『オヤ?』って思うこともあるし『違うだろう』と思うこともあるけども、何がどう違うかっていうことがやっぱり知りたいでしょう」
増田「たしかにそうですね」
加納「一流のその秘密がわかれば真似してもいいし、パクってもいいし、ということですよ。その全てがオッケーなわけじゃないけど、要するに価値観というか、1つの考え方、その親密性も含めて、それのクオリティーによっても、やっぱりいいものはいいわけだから、それだけ受け入れられるってのは、それだけの理由がある。理由があるわけだから、それは知っておくのと知らないままでいるのかというのでは、積み重ねが違うよね。その積み重ねを得てあらゆる感性を熟成させるのが芸術家だと思うんだ」
増田「チーズやウイスキーのように」