畠山理仁にしか採取できない言葉と景色が、この国にはまだまだたくさん残っている
民主主義へのエールであり、警告でもある
とはいえそこはネツゲン印、人間バンザイという大味なテーマを謳うためのお安い映画ではない。何より民主主義へのエールであり、警告でもある。何となくわかったつもりになっていたNHK党の「儲かるシステム」の仕組みを、ぼくはこの作品で初めてきちんと理解できたことも記しておきたい。
タイトルも秀逸だ。元ネタがタワーレコードの「NO MUSIC, NO LIFE.」なのは言うまでもない。じつはぼくは同シリーズ初年の1997年のクリスマスキャンペーンに起用された。久保田利伸さんとのコンビでサンタとトナカイに扮したのだった。それこそジェイムズ・ブラウンに15分会うために米西海岸まで飛ぶような、いわば「NO R&B, NO LIFE」な音楽ライターだったころの話である。
なにせ四半世紀も前の出来事。無論ふだんは忘れている。だが何かのはずみでこのフレーズを思い出すことがある。たとえば……音楽の仕事に手づまりを覚えるとき。そのたびに、後押しするより踏みとどまらせる効力に長けたフレーズだと痛感してきた。
だからこそ、「NO 選挙,NO LIFE」の言霊が畠山さんに強く作用することを切に願う。絶滅危惧種であろうと、彼に選挙取材を辞めてもらうわけにはいかない。畠山理仁にしか採取できない言葉と景色が、この国にはまだまだたくさん残っている。