クドカン×TBS磯山晶「不適切にもほどがある!」は旧ジャニーズ出演ゼロでも物足りなさ皆無
磯村勇人と河井優美が出てくるたび、瞬きすら惜しいと感じる自分がいる
これも宮藤ドラマの常として、〈哀しみエキス〉を挿入する手間を厭わないのが心憎い。第2話まで観たところでは、秘密のエキスはまだひと刷毛塗るにとどめている感じで、ほろりと泣かせる程度。小川の娘・純子が非行に走る理由をさらりと告白する場面とかね。だが『俺の家の話』でもそうだったように、この後はぐっとギアを入れて催涙度をマックスまで上げるんじゃないか。こちらも「号泣する準備はできている」(はい、江國香織ネタのサンプリングです!)。
宮藤さんは父親が中学教員だったという。人生で最も多感な時期を「教師の息子」として過ごした人なんだなあ。じつに興味深い。きっとこれからさまざまな悲喜が展開していくであろう『不適切』だが、ドラマの大前提となる「教師とその子」の心情の活写ぶりについては、第1話と第2話だけでもう十分すぎるほどに証明されている。
名作の誉れ高い『池袋ウエストゲートパーク』『木更津キャッツアイ』『タイガー&ドラゴン』『俺の家の話』(以上いずれにも阿部は出演)同様、宮藤×TBS磯山晶プロデューサーが送り出す『不適切』だが、過去作品との決定的な違いは、主演はじめ出演陣に旧ジャニーズの顔が見当たらないところ。だがそれに物足りなさを感じる人は皆無だろう。ぼくもまったく感じない。それどころか個人的に嬉しいサプライズもあった。一昨年11月の本連載で『PLAN75』を同年のナンバーワン映画と書いたが、その時「両者名演!」と絶賛したふたりの若手俳優……磯村勇斗(なんと二役)と河合優実が、今回カップル役で出演しているではないか。ふたりが画面に出てくるたび、瞬きさえ惜しいと感じる自分がいる。チーム磯山からは吉田羊と仲里依紗も登板。演技でガチ勝負もすれば、和やかに唱和もできる。もう自由自在なのよ。
あと、ストレートな会話劇から急遽ミュージカル仕立てに転換する構成にも不意を突かれた。しかもそこで歌い踊るのは、柿澤勇人、咲妃みゆ、木下晴香といった、この国のミュージカル界を代表するスターたち! 日比谷、有楽町エリアの劇場に足しげく通うような人たちにとっては、ちょっとした事件じゃないか、これは。
ところで、迂闊にも予約録画にしくじったぼくは、第1話を観逃していた。TVerだとテレビ以上にCMが厄介に感じるしなぁと観るのを躊躇していたら、ネトフリやU-NEXTでも観ることができると聞いた。CMなしで一気見できるのがサブスクの利点。だって課金してるんだもん。うん、令和の良いところだな。
そしてもうひとつの新作エンターテインメントは、異能の人スージー鈴木(1966年生まれ)の自伝的小説『弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる』(ブックマン社)なのだが、ここで字数が尽きた。続きはまた来週。