戦時中に禁じられた「禁演落語」をテーマにした舞台に出演した
「喇叭屋」はのちに「ラッパ屋」となり、主に市井の人々のささやかな人生に光をあてた(町工場の社員たちが、ただ「ももクロ」を完コピして踊ることだけに人生を懸ける「おじクロ」など)それこそ落語的人情芝居を数多く世に送り出してきた。劇団員も顔を見れば、「ああ、あのドラマ、あのCMで見たことある」という手だれのバイプレーヤー揃いだ。
私はこんなすてきな芝居に呼んでいただき至福、感動の嵐なのだが、SSのお2人と、なんと同期の落語家の役をやらなければいけないのは、いやもう冷や汗もののちょいとした地獄でもある。いきなり冒頭で、おのおの落語のネタを繰るシーンから始まるのだから震える。さらに「時そば」の蕎麦っ食いの所作まで披露する。あちらには日常茶飯事。息をするように自然と落語が出てくる境地の人たちにかなうわけがない。ええいままよと開き直って演じるしかない。ま、足はガクガクもんだが、無我夢中で真正面から取り組んだ。
しかし、鈴木さんの絶妙な当て書きのおかげと、そしてお2人の師匠の素晴らしい演技のたまもので、なんとかよい芝居になったと自負している。