今年の「團菊祭」では團十郎・菊五郎それぞれが本領発揮、新時代の幕開けを高らかに宣言
初役の菊之助は教わった通りに、書道でいう楷書のようにしっかりと舞う。玉三郎は草書の境地で自由自在に崩し、ずらし、揺らぐ。菊五郎は玉三郎に合わせつつも、基本を維持する。三者三様なのに、なぜかバラバラにならない。多分、二度と見ることのできない、この世のものとは思えない世界。
夜の部の口上では7代目菊五郎の声のよさを再認識。動きまわる役は難しいようだが、そのセリフ術だけで堪能させられる。舞台に出続けてほしい。
8代目は『弁天娘女男白浪』で、ようやく主役。南郷力丸に抜擢された尾上松也は凄みと愛嬌のバランスが絶妙。名コンビになりそうだ。
「勢揃い」の場では、新・菊之助が弁天小僧で、そのほか、市川新之助、坂東亀三郎、中村梅枝、尾上眞秀と、10歳前後の子どもたちが五人男に扮し、客席はほんわかとした空気に包まれる。
「極楽寺屋根」では、8代目が隙のない立ち回りを見せ、続いて「滑川土橋」では日本駄右衛門の團十郎が、劇場が揺れるほどの大音声で圧倒させて、幕。
團十郎・菊五郎それぞれが本領を発揮し、新時代の幕開けを高らかに宣言している。
(中川右介/作家)