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井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

クソまみれシーンのために年代物のバキュームカーを探す

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 そこで、吉原の本物のソープランド店を借りて、美術部がトイレットペーパーや泥絵の具で糞尿を作り、それを噴出させる前代未聞の撮影となった。30年前だから、古い三輪型のバキュームカーを登場させ、頑張ったものだった。おかげで迫力満点の画面にはなったけど、店の排水管を詰まらせてしまい、200万円ほど弁償金を払ったアホな思い出がある。

 実は、今度の新作にも、糞尿まき散らし場面がある。昭和期の田舎の貧しい青年たちがお金の恨みから、ソープじゃない某所に乗り込んでいく、これまた勇壮かつ哀れで悲しいスぺクタクルに挑戦したいわけだ。が、問題は“古い型のバキュームカー探し”だった。もはや、30年前とは違い、今、三輪車はどこにも見当たらないのだ。

 日本で年代物の劇用車を見つけるのは困難極まりない。50年式のトヨペットクラウンや、ブルーバード3Sさえ簡単には見つからないし、どこかのマニアが所持していても厚意だけじゃ貸してくれない。昭和が舞台の映画を作ろうとしても、車を集めるだけで金を使ってしまう。日本にはハリウッドみたいに年代車の貸出業者らしい業者もない。だから、昭和の映画も企画されなくなっている。どうしてもならCG画像でごまかすだけ。今の日本の自動車企業には古い文化を保存しておく心の余裕も金もないのだろう。

 そう思って諦めていたら、昔のバキュームカーを集めている方がおられた。しかも、我らのそんな無礼千万なシーンでも、貸してあげようとおっしゃる。心のお金持ちに出会えて感謝感激。この借りは何でお返ししたらいいだろうか。

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