早期発見のがんほど、メリットを実感しにくい
がん検診の負の面を伝えるのは難しいものです。
結論から言いましょう。がんは早期で見つければ見つけるほど、メリットを実感しにくく、失うものも大きくなります。
もちろん、がんを早期発見してすぐに治療すれば、その後の長い寿命を得るということは間違いありません。しかし、その半面、早期発見であればあるほど、症状もなく、日常生活に何の問題もない状態でがんと診断されるわけですから、治療で少しでも悪い面が出ると、その悪い面が強調されることがあるのです。
例えば、次のようなケースです。あなたが60歳で何の症状もなく、元気なうちに早期胃がんと診断されたとしましょう。すぐに内視鏡で切除しようとしたところ胃に穴が開き、全身麻酔で胃の3分の1を取ることに。その結果、手術後、食事があまり取れず元気がなくなり、うつになって、引きこもってしまった。
がんを早期発見すると患者さんはまったく元気な状態で治療がスタートしますから、少しでも悪いことが起こると、その害が際立ちます。