がん検診の効果は何で検討すればいいのか
がん検診の効果をキチンと検討するのは意外と難しいということをお伝えしてきましたが、これまで取り上げてきた問題点を一気に解決する手段があります。それが、この連載でも何度か取り上げた「ランダム化」と「適切に効果を評価する指標」です。
「ランダム化」とは、検診を受けるグループと受けないグループに、くじ引きで、でたらめに振り分けて、効果を比べる方法です。でたらめに振り分けることで、2つのグループはほぼ同質の集団になります。「年齢」「喫煙率」「肥満」の人の割合、「何か別の病気を持っている人」の割合、さまざまな因子がすべて2つのグループで揃うので、この2つのグループで効果に差が出れば「その差はがん検診を受けたか受けないかによるものだ」と結論できるわけです。
もうひとつの「適切に効果を評価する指標」は、がん検診の効果を「がんが早期で見つかったかどうか」ではなく、「がんの死亡の差」によって検討することです。
早期で見つかったかどうかで比べれば、がん検診を受けたグループで、早期がんが見つかる可能性が高いに決まっています。そのため、がん検診の効果は早期で見つけたかどうかで検討することはできません。これまで示してきたように、早期で見つければ早期の分だけ生存期間は延びますし、より進行の遅いがんの割合が高くなっているだけかもしれないからです。
がん検診の効果は、「がんの死亡率が少ないかどうか」を比較したランダム化比較試験で検討するのが一番いいのです。