「傷を治す」外科医の原点に立ち返えれば患者の負担も軽減できる
■自分の中に「鉄板」といえる型があるかも重要
また、外科医は自分の中で「こういう形で仕上がれば鉄板だ」と思える“型”を持っているかどうかも重要です。患者の血管の太さや心臓の大きさなど、全体のバランスが自分の中の「鉄板」に近い型に仕上げることができれば、機能の回復はもちろん傷もしっかり治ります。そうした自分の中の「鉄板の型」をしっかりイメージできていれば、それに向かってより速く正確に仕上げることを追い求めていく。そしてそれが、患者には長期の安定と併せて大きなプラスになります。
ほかにも、傷をきれいに治すための医療材料がかなりよくなりました。体の組織に近いバイオマテリアル(生体材料)からつくられた創傷被覆材や縫合糸もそうですし、人工血管や人工弁も進歩しています。
以前は、アメリカ人向けの大きなサイズのものをそのまま仕方なく日本人を手術する際にも使っていましたが、いまは同じメーカーでもアメリカ版、日本版、アジア版といったように数種類がラインアップされるようになりました。
外科医も医療メーカーも、「傷をきちんと治す」という原点をおろそかにしていると生き残れない時代になっていくのではないでしょうか。