「いつまでも 生きている気の 顔ばかり…」人間はそれでいいんだ
ただ、Rさんには3人とももう死が近いような顔にはとても見えなかったといいます。
Rさんの治療は3週間中断しましたが、外来で再開され、その後のCT検査では前回と比べて素人目にもがんが小さくなっているのが分かりました。いつの間にか切羽詰まった心の緊張感も消え、1年の命、3カ月の命、死の覚悟……といったことはあまり考えなくなっていました。
Rさんは、同室だった70代のKさんが「自分は来春までもたないかもしれない」と言いながら「春にはリンゴの木を植えるんだ」と言っていたことを思い出すそうです。
「来年の春、孫は小学校に入学する。なんとしても生きなきゃ。いつまでも生きている気の顔ばかり。人間はそれでいいんだ」
そう思えるようになりました。