炎症性乳管がん<2>電話口で母は泣き出し父は声を詰まらせ
一昨年5月、愛知県豊田市の総合病院で、「炎症性乳管がん」と告知された原田祐子さん(当時49歳=愛知県在住)は、今後の治療方針について担当医から次のように説明された。
「腫瘍が大きすぎて(約10センチ)、しかも乳首の周囲に腫瘍が散らばっており、手術は不可能な状態です。治療法は、抗がん剤しかありません。もし抗がん剤の効果があり、腫瘍が小さくなったら手術が可能になります」
「手術ができない」――。こう告げられた原田さんはあまりのショックに、涙があふれ出た。涙が止まらない原田さんの顔を見ていた担当女医も、ついもらい泣きをしていたという。
翌日、主人はセカンドオピニオンを求めて東京の知人も訪ねたが、結局、確定診断をした同病院で、5月9日から「抗がん剤」の日帰り治療をスタートさせる。
使用された抗がん剤は「ハーセプチン」(がん細胞の増殖を抑える分子標的剤)、「パージェタ」(抗悪性腫瘍剤。とくに手術不可能や再発患者)、そして「タキソテール」(抗悪性腫瘍剤。がん細胞を死滅させる)の3種類だった。