ヘビースモーカーでもがんにならない人がいるのはなぜ?
「薬物や毒物を体外へ排出するための物質にする反応を薬物代謝、それを促すために欠かせない酵素を薬物代謝酵素といいます。たばこの場合、CYP2A6と呼ばれる薬物代謝酵素が、たばこの煙に含まれるニトロソアミンと呼ばれる発がん物質を活性化することがわかっています。ただし、CYP2A6の遺伝子には遺伝子多型がある。そのため型の違いにより、同じ喫煙者であってもがんになりやすさが決まっているのではないか、と考えられているのです」(一石英一郎教授)
もちろん、たばこががんを引き起こす原因は他にもさまざま考えられる。
例えば、修復酵素の機能の違いだ。
「ニトロソアミンという発がん物質が活性化され、DNAに結合して複数の遺伝子が傷ついたとしても、すぐにがんを発症するわけではありません。傷ついた遺伝子のほとんどは、修復酵素によって修復されるからです。この修復酵素の能力の違いも、がんリスクを大きく左右することになります」(一石英一郎教授)
なお、たばこは肺がん以外に、胃がん、食道がん、膵臓がん、子宮頚がん、肝がん、大腸がんなどと関係することがわかっている。今後、たばこによるがんについては、新たな発見が報告されるかもしれない。