左心耳切除術のための新たな治療器の開発を進めています
いま取り組んでいるのは「自動吻合器」です。胃や腸といった消化管の手術では、30年以上前から自動吻合器が使われています。たとえば、腸管を切り取った場合、その端と端の切り口同士を結合させる必要があります。その際、かつては針と糸を使って手縫いをしていましたが、10~20分くらいかかります。一方、腸管同士をホチキスのようなステープラーで接続する自動吻合器を使うと、5分程度で完了します。しかも、手縫いした場合とクオリティーに差はありません。
この自動吻合器を左心耳切除術で使えるように改良を重ねているのです。左心耳切除術は複雑な手技を必要とする手術ではないので、従来から消化管の手術で使われている自動吻合器を少し改良しただけで十分に使用できます。なんとしても、左心耳を確実に切り取って縫い込めるような新しい自動吻合器を完成させたいと考えています。ただ、そうした新しい機器に対し、メーカー側は価格を高く設定しようとします。少しでも早く利益を出し、開発費を回収したいと考えるのは当然でしょう。
一方、限られた医療資源の中で、実際に治療を行っているわれわれからすれば、より多くの患者に新しい機器で治療を受けてもらうためには、初めから価格を安くした方がいいのは明らかです。その点では、使う側の現場と、作る側のメーカーに温度差があるのも事実です。
そうした“誤差”もしっかりクリアして、より多くの患者が左心耳切除術の恩恵を受けられるよう、今後も開発を進めていきます。