左心耳切除術のための新たな治療器の開発を進めています
また、欧米には左心耳だけを研究する学会があり、今後は当院の研究メンバーを派遣して積極的に関わっていくつもりだということは前回もお伝えした通りです。
私は8年ほど前から心臓手術と並行して左心耳への手術を行っていますが、これは欧米では脳梗塞の予防のために左心耳を処置する動きがあることをたまたま察知して、国内でいち早く取り入れたに過ぎません。心臓手術のついでに比較的容易に実施できるうえ、予防効果も明らかだったからこそ本格的に取り組んできました。
いまは日本でも徐々に広まってきていますが、欧米との差を縮めるにはまだ時間がかかりそうです。その要因として大きいのが、欧米と日本では左心耳への治療で使える機器に違いがあることです。治療法が異なることもありますが、保険適用されている機器がまだ少ないという点も影響していると考えられます。
■従来の自動吻合器を改良
そこで、いまわれわれは左心耳への手術に使うための治療機器の開発に取り組んでいます。現在、治療に使われている機器は外国製のものが多く、どうしても価格が高くなってしまいます。たとえば縫合に使う糸は、国産なら1本800円程度ですが、外国製のものは1本1200~1600円になります。国産プラスアルファくらいの価格帯の機器があれば、使いやすくなってもっと広まるのではないかと考え、医療機器メーカーと相談して新しい機器を開発しているのです。