軟性下疳<1>現在は輸入感染症になっている“幻の性病”
「梅毒によってできる硬性下疳は痛みがないのが特徴です。そのため、発見が遅れてパートナーに感染させてしまい、今も流行しているのです。一方、軟性下疳は症状が出るまでの潜伏期間(2日~1週間)が短く、ものすごく痛い潰瘍ができます。激痛でセックスはできません。すぐ気づくので感染が広がりにくく、終戦直後の流行が続かなかったのです」
また、軟性下疳では股間のリンパ節に化膿性炎症が起こり、腫れて痛い。梅毒も股間のリンパ節が腫れることがあるが、多くは痛みがないという。国内では“幻の性病”となった軟性下疳だが、気軽に海外旅行を楽しむ時代になり、あらためて「輸入性感染症」として注意が必要という。
「性感染症の原因を特定するには培養検査が行われますが、国内で軟性下疳を特定することは困難です。しかし、臨床所見(見た目の症状)により、通常このような潰瘍の症例では抗生物質の内服と軟膏で治療します。それで、これまでも軟性下疳と診断されないまま治癒しているケースがあるのかもしれません」
激痛を伴う潰瘍には、輸入性感染症の疑いがあることを知っておこう。