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佐々木常雄東京都立駒込病院名誉院長

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

今日は抗がん剤を打てるだろうか…がん患者の複雑な気持ち

公開日: 更新日:

 待合室のテレビでは、「○○県でコロナ患者が2人見つかった」とか、蔓延している話、今ごろになってからの水際対策?……といったコロナの報道ばかり続いています。

 ようやくAさんが呼ばれました。消化器内科のP医師が担当です。

「お元気ですか? 白血球数は2600でしたので、今週は抗がん剤は休みます。来週の予約を入れておきます。また、どうぞ」

 これで終わりです。3分にも満たない、まさに“2分診療”でした。会計を済ませ、Aさんが病院を出たのは11時半でした。病院の近くの駅に戻り、改札の中にある食堂で朝・昼食を兼ねて月見うどんを食べました。

 帰りの電車は座れました。Aさんはあれこれ考えます。

抗がん剤は打てなくて、ただすごすご帰るしかない。今日、仕事を休んだのはなんにもならなかった。元気なときならイライラ怒っていたと思うのだが、怒る気にもならない。3カ月前、CT、MRI検査で膵臓がんと診断されたけれど、俺の腹には本当に膵臓がんがあるんだろうか。今週、抗がん剤を休んでがんは進行しないのか? 抗がん剤のスケジュールは2週治療して、1週休む。これをどれだけ繰り返すのか……。『まあ、どうにでもなれ』と思っても、そうもいかない」

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