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天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

「外科手術」と「カテーテル治療」にはこれだけの違いがある

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 そんな状況の中、昨年11月に開かれた「アメリカ心臓協会学術集会」(AHA2019)で、こんな報告がありました。

 安定虚血性心疾患(安定狭心症)に対する侵襲的治療(主に冠動脈カテーテル治療)と至適薬物療法の有効性を比較した研究で、有意な差は認められなかったといいます。至適薬物療法というのは、心臓疾患のリスク因子である高血圧脂質異常症、糖尿病がある場合は、そちらの治療や生活習慣の改善で管理を徹底するものです。つまり、カテーテル治療と生活習慣の改善を含めた薬物治療では、安定狭心症の患者さんの予後に大きな違いはないという結果でした。これまで他の試験でも同様の報告が相次いでいましたが、今回あらためて補強された形です。

■生涯でかかる医療費にも差が出る

 今回の研究では、侵襲的治療に冠動脈バイパス手術も含まれていましたが、多くはカテーテル治療でした。もともと、虚血性心疾患に対する冠動脈バイパス手術とカテーテル治療の比較については、こんな議論がありました。手術は症状(動悸、息切れ、胸痛など)を改善し、生存率も健常者と近いレベルまで引き上げられる。かたやカテーテル治療は症状は改善するが、生存率を手術と同じところまでは持ってこられない――というものです。

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