いつまでも口から食べたい<上>経口摂取は困難と言われたら
「ほかにもいくつかのテストがあり複合して行いますが、評価者のスキルや経験、患者さんの状態の影響を受けやすい」
要介護高齢者で入院前からペースト食しか食べていない人に、顎が上がった姿勢で突然水を飲ませてもうまくいかない。それは、歩く機能が衰えた人にいきなり100メートルを全力疾走させ、タイムが遅かったり完走できなかったりしたら「自力歩行は不可能」と判断するようなものだ。
「痰の吸引や口腔ケアをしっかりし、誤嚥をしにくい姿勢で、食べるものを見せて脳に食べる準備をさせてからテストをすれば、誤嚥なくスムーズに食べられるケースはよくあります。本人も満足感があるので、覚醒を良好にしたり、食欲を高めたりします。結果、脳機能の活性となり、摂食嚥下機能の改善を促進する評価となります」
残念ながら、現在の医療では、口から食べられなくなった理由をきちんと探り、対処されるケースはまれだ。大事なのは、1~2回の評価で経口摂取が可能かどうかの判断をしないこと。「今」は経口摂取が困難でも、栄養を十分確保して食べ物を使った訓練をしたり、前述のように痰の吸引や口腔ケアをしたり、ステップを踏んで口から食べられるようになる人は少なくない。
医師の「口から食べることは困難」の言葉をそのまま受け入れず、あきらめないことだ。