ギター講師の黒河内直樹さん語る「局所性ジストニア」との壮絶闘病
結論から言えば、少しは良くなりました。ですが今度は手術の副作用で大変でした。右半身に力が入らなくなり、最初は真っすぐ立つこともできませんでした。一番困ったのはろれつが回らなかったこと。歯科治療で麻酔されたときのような状態が続き、言葉が伝わらないのがつらかった。作業療法と理学療法と言語のリハビリに通いました。ろれつが気にならなくなるまで18カ月かかりました。
自分が構築してきた運動学習をまた地道に繰り返し、現在2回目の手術からおよそ5年がたちました。まだ完璧ではないですし、疲労がたまるとこわばりの症状や、ろれつがおかしくなったりもするんですけど、少しずつギターは上達しています。
病気になる前は、ひたすら好きなギタリストの真似をして、弾けないと「練習が足りない」と自分を追い込みました。それが症状の悪化を招いてしまったと思います。でも、ひとつ病気になってよかったことがあるとするなら、それまでの弾き方を外科的にゼロにして、新たに自分に合った弾き方を再インストールできたこと。学び直すチャンスを得たことです。
根性論ではなく、体のどこをどう使ったらいいのかを示すことで、長く一生演奏を楽しめる弾き方を構築していく。そんな教室ができたのも、この病気を経験したからこそだと思います。