ヨーグルトに熱中症予防の効果あり!
今年も「熱中症」が世間を騒がせる季節となった。熱中症は誰にでも起こり得る身近な病気だが、一歩間違えれば取り返しのつかない事態に陥る恐れもある。それだけに油断することなく、しっかりと予防したいものだ。
■コロナ禍の今はマスク熱中症にも要注意
熱中症は高温・多湿の環境下で体内の水分やミネラルが足りなくなってバランスが崩れたり、体温調節機能が働かなくなることで体内に熱がこもって発症する。熱中症にかかると体のだるさやめまいなどといった症状に見舞われ、ひどくなると痙攣や意識障害を起こし死亡するケースもあるというから何とも恐ろしい。
熱中症に詳しい、せたがや内科・神経内科クリニックの久手堅司先生は、
「今年は例年以上に暑く、多湿な夏です。湿度が高いと汗をかきにくくなるため、体内に熱がこもって熱中症になりやすくなるのです。また、雨が多い夏は天候や気圧が目まぐるしく変わります。そうなると自律神経の働きが乱れがちになり、そのせいで体温調節がうまくいかなくなって熱中症の発生を増やしてしまうことにもなりかねません。さらに、コロナ禍が続く今、『マスク熱中症』にも注意をしてください。マスクをしているとどうしても熱がこもってしまいますから、必要がない時は外すようにしたほうがいいでしょうね」
と警鐘を鳴らす。
■熱中症予防には自律神経の働きも重要
何年も前から熱中症の怖さやその予防に関する話題がマスコミを通じて広く知らされるにつれて、その対策には水分や塩分の補給、休息、気温や湿度の管理などが大切であることが人々の間に深く浸透してきた。
その上で久手堅先生は自律神経の働きも重要なポイントだと指摘する。
「自律神経には気温や気圧、緊張や運動時など体の中や外のさまざまな環境に対応して体温や血圧、脈拍などをコントロールするという重要な働きがあります。実はこれは腸と密接な関係を持っています。そのため腸の調子がいいと自律神経の働きが安定して発汗や体温をうまくコントロールできるので、熱中症になりにくくなるのです」
と解説する。
■熱中症になりにくい体づくりにヨーグルトを活用
熱中症についてよく理解できたところで、熱中症になりにくい体づくりのためにはどうしたらいいのか、引き続き久手堅先生に聞いてみた。すると、久手堅先生は身近にある食品「ヨーグルト」を挙げ、それを毎日継続的に摂ることだという。
「ヨーグルトには良質なタンパク質である乳タンパクが含まれています。タンパク質は体そのものを健康に保つための栄養素として重要な働きをすることから、熱中症になりにくい体づくりにとっても重要な栄養素となります。さらに、ヨーグルトには整腸作用のある乳酸菌やビタミン群、ミネラルなども含まれているので、効率的に栄養摂取できます。最近はヨーグルトや乳酸菌に関する研究が進み、さまざまな商品が開発されていますので、自分に合うものを見つけるのもいいですね。暑い時によく冷やして食べると一時的に体温を下げられますし、食欲のない時でも食べやすいのではないかと思います」
ヨーグルトはそれだけで食べてももちろんいいが、自律神経にとって重要な働きをするセロトニンを合成するのに必要なトリプトファン、炭水化物、ビタミンB6が全て含まれているバナナはヨーグルトとの相性がとてもいいので一緒に食べるといいとか。さらに、久手堅先生が勧めるのが梅干しだ。
「意外と思われるかもしれませんが、これがよく合うんですよ。梅干しにはクエン酸が含まれていて栄養的にも文句がないので、騙されたと思ってぜひ一度試してみてください」
■ヨーグルトの効果に新たな可能性があった!
ここまでの久手堅先生の説明でも分かったようにヨーグルトにはさまざまな効用があるが、最近、ある研究によってヨーグルトの新たな効果の可能性が示唆され、注目を集めている。
それは、信州大学大学院医学系研究科の増木静江先生らが発表した、健康な高齢者を対象とした真夏の屋外での運動において、運動後のヨーグルト摂取が心血管系負荷を軽減するかどうかの検証試験だ。具体的には、男性28人、女性75人を、毎日の運動直後にゼリー飲料を摂取させる群とヨーグルト飲料を摂取させる群に分け、体温上昇の指標となる運動時の心拍数を比較するもの。結果、継続30日以降で、ヨーグルト群のみ運動時の心拍数が有意に低下した。
このことから継続的な運動と、運動後のヨーグルト摂取は高齢者の体力づくりを向上するとともに、暑熱耐性を改善させ、熱中症対策になる可能性があると考えられるというわけだ。
「今回は高齢者を対象とした比較試験でしたが、若年層であればより短い期間でも効果が得られるでしょう」(増木先生)
気温が高くなる時期に向けて、毎日の運動+ヨーグルトで熱中症になりにくい体を手にいれよう。