認知症で一番身近な人間に被害妄想や攻撃性が表れるのはなぜか
一方で、記憶や判断力が低下するものの、不安などの感情の記憶は残ることもあります。ですから「物を盗られた」などの悪い記憶は強烈に残ってしまう。置いたはずの財布がなくなる出来事が何度も繰り返し起こると、妄想が固着し、身近な周囲に疑いの目を向けるのです。
比較的最近知り合ったヘルパーさんに対し、毎回「知らない人」として身構え、疑うケースはあります。しかし、多く見られるパターンは、長期記憶として存在を覚えていて目の前で世話をしている家族や付き合いの長いヘルパーさんを、「あいつが盗った」と決めつけて疑うケースです。状況把握ができないので、これまでの関係性を複合的に考えて、「あの人はそんなことをしない」と判断することもできなくなるのです。
また、介護者とクリニックに来院する患者さんは大抵黙っています。医師と介護者の会話のスピードについていけず、話の展開を理解できないためで、患者さんはその時、自分の分からない話をしている=悪口を言っていると誤解することもあります。
自分の身近にいる人たちが談笑すると、笑われているんだと被害妄想を抱き怒り出すケースもあります。