トリプルネガティブ乳がん…新たなメカニズムの薬の登場で診療はどう変わる?
乳がんには、大きく分けて5つのタイプがある。そのうちの一つ、「トリプルネガティブ乳がん」に新たな薬が登場した。海外ではすでに使われていたが、日本でも製造販売が承認され、使えるようになったのだ。どんな薬なのか? そもそもトリプルネガティブ乳がんとは? 名古屋市立大学大学院医学研究科共同研究教育センター臨床研究戦略部特任教授の岩田広治医師に聞いた。
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トリプルネガティブ乳がんの新たな治療選択肢となったのは、「トロデルビ(一般名サシツズマブ ゴビテカン)」という薬だ。抗体薬物複合体という、抗がん剤など他の薬と異なるメカニズムの薬になる。
抗体薬物複合体を構成しているのは、「抗体」「抗がん剤」「リンカー」の3つ。リンカーは、抗体と抗がん剤を血液中で安定して複合させる働きをする。
「抗体薬物複合体は、簡単にいうと、抗体に小さい抗がん剤がくっついているものです。抗体薬物複合体を投与すると、がん細胞の表面に発現した抗原を目印に抗体が血液中を進んで抗原と結びつき、リンカーが分解され、抗がん剤が活性化してがん細胞を攻撃します。かなり強力な抗がん剤ですが、がん細胞へ届けて効果を発揮するので、体への有害性は軽減できます」(岩田医師=以下同)