認知症で一番身近な人間に被害妄想や攻撃性が表れるのはなぜか
認知症の患者さんの特徴として、判断力や理解力が低下し、状況把握が難しくなります。そのため、周囲の話の流れを理解できずのけものにされているという被害妄想が表れてしまう。また、感情のブレーキが制御できないので暴力や暴言といった攻撃につながります。
認知症の中でも、脳の前頭葉や側頭葉が萎縮する「前頭側頭型認知症」の患者さんは人が変わったように攻撃的になるケースがあります。とくに前頭葉は、思考や感情、判断をつかさどるため人格に影響を与えるのです。
また、「レビー小体型認知症」は、幻覚などが見えるため不安を抱きやすい。恐怖から暴力性が出るケースがあります。
そして、被害妄想や攻撃性が一番身近な人に向かうのは、「介護者として近くにいるので確率的に敵視されやすい」というのが、私の見解です。
認知症の症状では、記憶をつかさどる脳の海馬の働きが縮小し、短期記憶障害が起こって数分、数時間前の記憶保持ができなくなります。そのため、たとえば直前に財布を置いた場所が分からなくなります。患者さん本人は「あったはずの物がない」と考えますが、状況把握力が衰えていますから、自分は何もしていない=盗(と)られたと捉えてしまう。