認知症のひとつピック病の患者が万引を繰り返すのはなぜ?
実際に私が診た50代の患者さんに、百貨店内の文房具店で万引をした方がいました。万年筆など高価な商品を取り扱っているので盗難防止の目的で万年筆に紐が取り付けられています。ですが、その方は従業員や他の客がいるにもかかわらず自宅から持参したペンチで紐を切り、万年筆をそのまま持ち帰ろうとポケットにしまいました。あまりにも堂々とした行動に違和感を持った警察官に受診を促され脳の検査を行ったところ、ピック病と診断されました。
これまで窃盗の前科がなく、50歳を過ぎて急に万引行為を繰り返すようになったら、ピック病の可能性も視野に入れておく必要があります。
万引を防ぐためにも、本人が外出する際は家族が必ず付き添いましょう。仕事などでそれが難しい場合は、事前に病院でピック病の診断書を1枚書いてもらって数枚コピーしておき、万が一留守中に本人が万引をしてトラブルになっても、警察に診断書を提示すればピック病による症状だと説明できます。また、本人が認知症者であると示すためにも、日頃から腕に「オレンジリング」を着用しておくといいでしょう。